トップページ  >  コラム

コラム

特許・実用新案・意匠・商標などについて、最新のコラムを掲載しております。

コラム

知的財産権講座(98)

和歌山大学顧問

杉本特許事務所所長弁理士 杉本勝徳

「意匠制度(3)」
意匠法第2条の定義の中に「物品」の形状、模様若しくは色彩・・・」とあることは前回に述べたが、この「物品」の意味について説明したい。意匠制度は抽象的なモチーフ(図案)を保護する制度ではなく、世の中にある物品その物を意匠的に保護する制度であり、言い換えれば形状や図案が物品と一体化した時に保護される制度だ。このことを専門的には形状やデザインが物品に化体(けたい)した(一体不可分)と言う。

ところで意匠権の類否は物品及びデザインが異なると否類似となるので、物品が異なれば同一の意匠が存在しても不思議ではない。例えば自動車や一戸建の住宅と貯金箱は非類似物品であるから、自動車や一戸建ての住宅と同じ形状やデザインの貯金箱や玩具が別個の意匠権として登録される可能性がある。またパロディで意匠権の存在する口紅やたばこのケースとそっくりなチョコレートが存在することは、物品が異なることにより意匠権の侵害を構成せずに商品として販売できることはあり得る。

意匠権の類否に言及すると、上記のとおり、物品が異なれば同じ意匠のものがあってもそれは否類似として容認されるし、更にデザインが異なれば物品が同じでもやはり否類似となる。結局、類似として問題になるのは物品が同一(類似)でありデザインが同一(類似)の場合のみである。


前回のコラムはこちら

このページの先頭へ