和歌山大学顧問
杉本特許事務所所長弁理士 杉本勝徳
「実用新案出願の要件(8)」
外国の実用新案制度およびその利用実体を検討することによって日本の実用新案制度の存廃の参考になると前回述べた。早速調査すると次のような現状が把握できた。世界には65ヵ国が実用新案制度を採用しているが、その運用によって権利付与の実体は異なる。
特許制度142カ国を思えば意外に多くの国が採用していることがわかる。その中で飛び抜けて出願の多いのが中国。日本が6860件(2015年度)だったが、同年の中国の出願件数は112万7千件余であり、実に日本の160倍以上の出願件数だ。人口が日本の10倍としてもその異常さに驚かされる。ドイツが1万4千件、ロシアが1万1千件で、1万件を超えているのはこの3国のみであり、日本より出願の多いのは韓国(8711件)、ウクライナ(8616)と続き日本は第6位に位置づけられる。
日本は2012年に8千件を越していたが、中国は同年74万件、ドイツ、ロシアは2012年から漸減状態だ。世界のこの出願状況を検討すると、中国以外の国々にとって実用新案制度はそれほど利用されていないのかと考えられる。特許庁、経産省はユーザーの意向を調査して実用新案制度の在り方を検討されるべきだろう。私個人は本欄で述べてきたようにそれなりの利用方法があるので、存廃には慎重さが必要だと考えている。(数字は2017年版特許行政年次報告書による)。
|