和歌山大学顧問
杉本特許事務所所長弁理士 杉本勝徳
「不正競争防止法について」B
不正競争防止法(以下不競法という)第1条第1項第1号の規定は、前回述べたとおり他人の商品等表示として需要者の間に広く認識されているものであって、その表示を使用すれば他人の商品又は営業と混同を生じさせるものである。従って本条項1号は商品又は役務が同一または類似の場合に限られるのであって、需要者の間に広く認識されているその商品等表示が非類似の商品または役務にまで及ぼす場合を規定しているわけではない。
例えばコンピューターで周知な表示「アップル」について考察すると、コンピューターと全く関係のない化粧品に「アップル」を使用しても、需要者は「アップル」コンピューターと混同を起こすことはない。尤もコンピューターの「アップル」が化粧品にも商標登録している場合はこの限りではない。同じことは菓子で周知な表示である「明治」を学習用ノートに「明治」を使用しても菓子と混同することはないが、やはりノートに「明治」が商標登録されている場合はこの限りではない。
このように不競法第1条第1項第1号は周知の表示を使用している商品または役務の範囲内での混同であり、商品または役務の範囲を越えて使用を制限するものではない。但し次回に述べる不競法第1条第1項第2号は範囲を越えても混同を起こす場合を制限する規定である。
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